川田自動車物語

弥富高校で自動車修理の出前授業

■ 出前授業

社長が NPO法人ASKNET 代表の毛受(めんじょう)さんのお誘いで弥富高校で出前授業を行いました。下記は、その時の内容です。

講 座 名 :車の修理屋さん

講座内容 :家業である川田自動車を継いでの話をします。自動車の修理する仕事をしていると、お客さんの笑顔が最高のプレゼントになります。楽しいことばかりではありませんが、そこでのやりがいや生きがいを語ります。

■ 自己紹介

皆さん、こんにちは。私は、名古屋市の北区で車の修理を営んでいる川田幸久といいます。今日はよろしくお願いいたします。

初めて、講師というのを挑戦いたします。どうか、新米の講師と思って、お手柔らかに、やさしく接していただけましたら、ありがたいです。それでは、早速ですが、車の修理という仕事を通して私が感じたことをお話して行きたいと思います。 

まずは、本日の流れですが、1番目、「逃げない」。2番目「見つける」。3番目「何のために仕事をするのか」。4番目「最近、私が感じること」。こんな流れで、途中、質問タイムも設けながら、進めていきたいと思います。

■ テーマ「逃げない」

それでは、1番目のテーマ「逃げない」です。今日のこの日のことを考えると、昨日の夜から逃げたくて、逃げたくて、たまりませんでした。少し風邪気味だから、「インフルエンザ」っていう手で休もうか、どうしようか、そんなことも冗談で考えながら今日を迎えております。

丁度、皆さんと同じ頃、私は逃げてばかりいました。自転車を盗んでは逃げる。原付バイクに3人乗りして、警察に見つかっては逃げる。勉強も一緒で、期限までには提出できず、結局逃げる。そんなことの繰り返しでした。だけど、学校という世界は、たくさんの大人が見守り、私たちを陰で支えているので、その中にいる私は、大きな問題を背負うこともなく過すことができました。だけど、結局、強制退学になってしまい、学校をやめることになりました。

逃げることが、体に染み付いたまんま、社会に出た私は、大変厳しい現実を突きつけられることになります。それは、学校では、自分が逃げていても、先生や、周りの大人が見守っていてくれた御蔭様で大きな実害も無く過せたことも、社会では、自分が逃げた問題は、何倍にもなって自分に戻ってくることが解ったのです。ちょっとしたことでも、何倍にもなるもんですから、とっても大きな問題に発展するんです。お客様のクレーム、事故直後の対応、言葉の掛け違いから起こる私たちへの不信感。そんなことも、ほっておくと大きな問題として戻ってきます。だから、ちょっとしたことも逃げずに、ちょっとしたことをめんどくさがらずに、直ぐに、誠意をもって対応することが本当に大切だということが解りました。「問題を先送りにしない」。このことを私は、社会に出て一番最初に学びました。

もし、私のように、今、逃げている方がこの中にいるのなら、逃げていても、またいつか自分に返ってきます。今の内から、少しずつでも、逃げずに対応して欲しいと思います。「あ〜どうしよう、どうしよう、と嘆いているのではなく、今ある問題を、今日解決できず、明日に持ち越してしまったことを悔やんでください」。どうか、私のような失敗をせず、逃げずに立ち向かえば、必ず問題は解決できることを知って欲しいと思います。

 

さらに、今は、考えが少し変わって、最初は、逃げていた。逃げていたら、問題が大きくなることをしった。だから、大きくならないよう逃げずに、問題を解決するようになった。今は、色々な問題は、チャンスだと感じています。問題は、お客様との信頼関係が深まったり、仕事の幅が広がったりしますので、絶好の機会だと思います。その問題を楽しむようになりました。皆さんにも問題があったら、楽しんで解決して欲しいと思います。

■ テーマ「見つける」

それでは、2番目のテーマ「見つける」です。

「何を見つける」と思いますか。

自分を見つけて欲しいと思うのです。決して慌てて見つける必要はありませんが、自分が見つかると、とっても楽しいし、とっても楽だし、とっても世界が広がります。

私は、車の修理をすることになったのは、父親のもとで働いていた社員が辞めて、一人で大変だった父親を見て、母親が私に、少し父親を助けてあげて欲しいと言われたのが切っ掛けです。すぐに辞めるつもりで働き始めたら、結構仕事が大変で、途中でやめることができなくなりました。おまけに、新しい社員が入ってきて、どんどん忙しくなりました。そんな時に、自分にとってはショックなことが起こるんです。

私は、車の雑誌も、車関係の修理書も、仕事のために勉強として見ていました。だけど、社員は、TVを見るのと同じように、好きで車の雑誌や、修理書を見ていたんです。勉強のために見ている私と、好きで見ている社員とでは、呑み込みは、社員のほうが早いんです。私は、社員に刺激されて、どんどん勉強しました。だけど、根本的な根っこの部分では、こいつには勝てないな。そう思い始めたんです。そこで、そもそも自分は何で、この仕事をしているんだろうか、そんなことを考えるようになりました。

私がこの仕事を続けてこられたのは、お客様からの感謝の言葉や、お客様の期待に応えたい。そう思ったからです。故障しているお客様の所に飛んでいって、対処する。そんな時に、お客様が笑顔で「来てくれてありがとう」そんな、感謝の言葉が、私に勇気を与えてくれていたんです。そっか、自分は車が好きなんではなく、車を通して関わり合う人の気持ちが好きだったんだ。そんなことが解りました。じゃ、車は、好きな社員に任せて、お客様の気持ちが良くなることを、私は考えていこう、そう思ったんです。そしたら、とっても気持ちが楽になりました。

自分が見つかると、その自分は、他の誰でもない、自分ですから、誰かの真似をする必要もないし、誰かを意識して、誰かと比べることも無くなるんです。全ては、自分が自分をどのように超えて行くかだけなんです。そこには嘘はありません。真実しかないんです。自分が見つかるととっても楽ですからね。

■ テーマ「何のために仕事をするのか」

それでは、3番目のテーマ「何のために仕事をするのか」です。何のために仕事をすると思いますか。答えは、ありませんので、誰か、自分の考えをもっている人はいますか

学生の答え 「社会に貢献するため」「自分のため」「家族のため」「人生を楽しむため」・・・

私も教えてもらった話です。人間が生きて行くためなら、全ては「ただ」って知ってます。川も森も人間が汚くしてしまったので、なかなかイメージできませんが、自然が破壊される前は、水は「ただ」ですよね。もちろん空気は「ただ」ですよね。魚だって、木の実だって「ただ」ですよね。生きて行くためだけなら、みんな「ただ」であるんですよね。でも、たくさんあっても食べきれないから、余分な物は、おっそわけ、分け与えていたんですね。ある人は魚とりの名人、ある人はしいたけとりの名人、互いの得意な分野を生かし、互いを支えていたんだと思います。

私の仕事は、そんな人が、現地に安全に行ける手助けを車を通して行なっているだけなんです。どんな仕事も同じです。誰かの手助けをしているのが仕事だと私は思っています。これからも、そんな気持ちで仕事をして行きたいと思います。車という商品を売っているのではなく、その空間を通して、お客様の手助けをしているだけなんです。

■ テーマ 「最近、私が感じること」

それでは、最後に質問したいと思います。車に関わる仕事は、どんなものがあると思いますか。思いつくまま、一人一つずつ答えていただけますか。

学生の答え 板金屋、ディーラー、メーカー、金型屋、ゴムを作る会社、部品を作る会社など。

このように、車ひとつとっても、たくさんの人が関わっています。これは、どんな仕事も同じことが言えます。何気ない、当然のことの裏側には、たくさんの人の苦労があります。私たちは、裏側で働く人たちを信頼して生きています。その気持の上で社会はあります。信頼という目には見えないものの上に私たちはいるんです。だから、信頼を裏切るようなことはしてはいけないし、嘘はついてはいけないのです。

皆さんに最後に伝えたいのは、何か、特別なことをする必要に迫られていて、「何かしなくてはいけない、夢を持たなくてはいけない、何がしたいかをみつけなくてはいけない」そんなことに、もし重圧を感じているのであれば、そんなものは捨てほうがいいです。そんな事よりも、毎日、最低限な約束をきちんと守る。そして、もし気持ちに余裕ができたら、誰かを助けてあげてください。あなたが、誰かとの約束をきちんと守っているということは、間接的に誰かをあたなは、支えている、助けているということを知ってほしいのです。、皆さんのちっちゃな信頼が大きな信頼を生んでいるんです。そんな信頼ある社会を残して行きたいし、そんな社会を大切にしていきたいと思います。

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